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  • 執筆者の写真Masa Goto

対談 with Tony Levin (後編)

更新日:2020年1月18日



こんにちは。AMSA Records代表のMasa Gotoです。

このブログでは色々なミュージシャンやアーティストとの対談や、ツアー等の裏話を書いていこうと思います。

皆さんの意見も反映していきたいので、是非お気軽にご意見お寄せください。


前回から更新が空いてしまいましたが、第5回はキング・クリムゾンやピーター・ゲイブリエルでの活動で知られるレジェンド・ベーシスト、Tony Levin(トニー・レヴィン)氏との対談の後編です。前編はこちら:https://www.amsa-japan.com/blog/対談-with-tony-levin-前編

(インタビューが行われたのは、2018/12/21 名古屋某所。キング・クリムゾン名古屋公演の前)




・・・それでは対談の続きに入りたいと思います。


≪対談 with トニー・レヴィン:後編≫


Masa Goto(以下Masa):先程「自分はジャズ・ベーシストではない」と仰っていましたが、僕はあなたのアップライト・ベース演奏がとても好きで、特に弓での演奏は本当に美しいです。

Levin Brothersのツアー中もその音の美しさに何度か涙しました。


多義に渡るジャンルでの演奏については質問しましたが、”ベース”という楽器の範囲内においても多様な選択肢を持たれていますよね。

エレクトリック・ベースは勿論、チャップマンスティック、アップライト・ベース、チェロ、スタイル的な事ですが自身で発案された”ファンク・フィンガーズ奏法 etc、、、

やはり先程の話の様に、音楽を聴いた時にそういう選択肢や方法も自然に浮かんでくるのでしょうか?


Tony Levin(以下Tony): これだけ長年に渡って演奏しているとね(苦笑)

新しい事にチャレンジする時間は沢山あったから。。。


チャップマンスティックに関してはもう長いこと弾いているけれど、初めて手にして最初の1年は本当に簡単なフレーズだけを練習して弾き方を覚えたよ。

最初に使ったのは1976年。何故覚えているかというと、その年にピーター・ゲイブリエルの最初のアルバム「Peter Gabriel (Car)(1977年発売)」のアルバム・レコーディングに呼ばれたからだ。

その時ピーター・ゲイブリエル、そしてロバート・フリップの2人と同じ日に出会い、私にとってはとても興味深い日だったよ。

その時のレコーディングでチャップマン・スティックを弾いてみたけど、プロデューサーが気に入ってくれず結局その録音は使われずじまいでね。

何にせよ、1981年に私がキング・クリムゾン加入する前には既に5年程チャップマン・スティックを演奏していて、その殆どがピーター・ゲイブリエルとのツアーでの使用だった。


キング・クリムゾンに加入した時は、チャップマン・スティックの持つそのパーカッシヴで独特なサウンドがいくつかの曲にとても上手くフィットすると感じたんだ。

ベーシストでないと分からないかもしれないけれど、低音で速いフレーズを弾いても音が籠って何を弾いているか分かりずらいんだ。

その点チャップマン・スティックは例え速いフレーズを弾いても発音がとても鮮明で際立って聴こえる。それに2オクターヴ飛んだりする奇妙なフレーズも簡単に弾けるしね。

兎に角、その頃はキング・クリムゾンというバンドのカラーに似合った革新的なサウンドを色々と模索していたよ。

普段の自分では弾かない様なテクニカルな弾き方もバンドのサウンドに引き出されたりね。



Masa:あなたのチャップマン・スティックでの演奏に関しては、初めてYouTubeでKing Crimsonの「Elephant Talk」の演奏動画を観たとき衝撃を受けました。


どうやってあのフレーズを思い付いたのですか?



Tony: どうやって思い付いたかは全く覚えていないな。。。

ただバンドでこの曲をリハーサルしていた時、自分から「このベースのフレーズをイントロにしたい」と言ったのは覚えている。

普段そういう事は言わないんだけどね。その時はこのベースパートの”普通じゃない感じ”がとても気に入っていたんだ。


Masa:成る程。。。

話は変わりますが、音楽を始めた頃は兄のピートとよく一緒に演奏したりしていたのですか?


Tony:いや、全く!

ピートは私より3歳も年が上だからね。高校時代の3歳差は大きかったよ。

それこそLevin Brothersを結成するまで一度も同じバンドで演奏した事はなかったんだ!

ライブで共演する事は何度かあったけれどね。


Masa:そうなのですね!驚きました。。。



Tony:だから数年前Levin Brothersを結成する時は「折角だし、僕たちがお互い最初に好きだった音楽、8〜10才の頃に好きだった音楽を演奏しよう!」という構想で始まったんだ。

とは言え、自分にとってはあの手の”クール・ジャズ”と言われる音楽を演奏するのは初めての経験だった。


ただ、飽くまで最初のアルバムがそういうコンセプトであっただけで、今後このバンドのサウンドが全く変わっていく可能性もある。もしかしたらピートが自分のプロジェクトで演っている様な、よりフュージョン的なサウンドになるかもしれない。



Masa:実際にピートと初めてバンドを結成してみてどうでしたか?

兄弟だからこそとても自然でしたか?或いは兄弟ならではの悩みもありましたか?


Tony:全てが簡単だったよ。

まずピートと「昔好きだったオスカー・ペティフォードの様な音楽を演ろう!」という所から入り、オスカーの曲を演奏したり、そういうスタイルの曲を一緒に書いたりしてね。

それからピートがバンドに相応しいメンバーも連れてきてくれて、、、

今までで最も結成が楽なバンドだったよ。

何も余計なことは考えなくて良いし、メンバーが皆お互いを尊敬しあっている。

、、、人間的にも音楽的にもね。

だから何か大事な決断をする時もまず揉めることは無い。

まぁ、お互いを熟知している兄弟がバンドを組むんだから”簡単”であるべきだよ(笑)



Masa:Levin Brothersでの来日ツアーは如何でしたか?


Tony:君と一緒に廻ったツアーだね。素晴らしかったよ!

日本にはもう何度も来ているけど、”日本でジャズを演奏する”というのは私にとって特別な事だし、ピートと一緒に来れたから尚更特別だった。

君もツアーをしっかりオーガナイズしてくれたし、とても楽しかったよ。



(↑Levin Brothers初来日ツアー時のWEBフライヤー)



Masa:滝廉太郎の”荒城の月”も演奏されていましたが、誰のアイデアだったんですか?


Tony:覚えていないけれど、確かピートのアイデアだった気がするな。。。

それに関しては私のアイデアではなかったけれど、昨晩のキング・クリムゾンのショーでは自分のアップライト・ベースでのソロ・パートで日本古謡の”さくらさくら”を少しだけ演奏したよ。

ファンの人達は曲に気が付いて笑ってくれていたけれど、ステージ上の誰もこの曲を知らないから「何で笑ってるんだ?」って思っただろうね(笑)


(↑Levin Brothers東京公演のセットリスト。6曲目の『JAPANESE FOLK』は『荒城の月』の事。)



Masa:日本の伝統音楽についてはどう思いますか?

旋律的にはペンタトニックが基盤になっているものが多いと思いますが。


Tony:私は日本の伝統音楽にそんなに詳しい訳ではないけれど、とてもコンプレックス(心の中に複合的な色彩をもつ感情。観念感情、或いは複合観念的な意)な音楽だと思うよ。

私が人生で2度目に日本に来たとき、、、君が生まれるずっと前だね、、、

ハービー・マン(Herbie Mann)と来た時に、尺八等の伝統楽器の日本人演奏家達と共に「Gagaku & Beyond」という”雅楽”のアルバムをレコーディングした事がある。

リハーサルに費やせる時間がなく、直ぐに録音するという環境だったのは残念だったけどね。数日リハーサルに費やすことが出来れば、もっと彼等の演奏を深く理解してレコーディングに臨めたと思うから。

かなり昔の事だけれども、それが自分にとっては日本の伝統音楽に最も深く関われた体験だったよ。


(↑Herbie Mannの1976年作品 「Gagaku&Beyond」)



Masa:あなたの日本での思い出をもう少し掘り下げて聞いてみたいのですが、ヴィブラフォン奏者のGary Burton/ゲイリー・バートンと共にあなたが初めて日本を訪れた1971年の時の日本の印象を聞かせて頂けますか?


Tony:今とは全く違うよ。私はとても若かった(当時25歳)から日本に初めて来られる事に興奮していたし、当時の日本の経済状況だったり、、何もかもが違った。

当時は今と違ってコーヒーがとても安くて、殆どタダの様な値段だったのを覚えている。


それと私はどこへ行っても街を歩いている誰よりも背が高かったから、子供達なんかは立ち止まって私の事を見上げていたな(笑)

髭も生やしていたしね。その頃は今より髭を生やしている人が少なかったよ。

兎に角何もかもが新鮮で違った。


変わらない事と言えば、街から街へ電車で移動するのは今も変わらないし、その当時から日本製のNikonのカメラを愛用していたよ。当時はデジタルでなくフィルムだけどね。

神社や黄色い帽子を被って登下校する小学生達、全てが新鮮で何でも撮影していたよ。

まぁ、写真ばかり撮っているのは今も同じだね(笑)


(↑Levin Brothersの横浜Motion Blue公演でステージ上から客席の写真を撮るTony Levin。Photo by 木島千佳)



Masa:あなたは日本のアーティストのレコーディングにも沢山参加していますよね。

中には日本の国民的アイドルグループだったSMAPなどもありますが、それらのレコーディングでの印象的な思い出はありますか?


Tony:そういったレコーディングは正直殆ど覚えていないな。というのも、その手の「スタジオ・ワーク」的な仕事は大抵ニューヨークのスタジオに3時間、又は6時間雇われてアルバム一枚分の録音をしたりする。

大抵現場にアーティストはいなくてプロデューサーがいるだけだから、作曲者と曲のフィールについて話し合うことも出来ない。

個人的にはもっと音楽的に密接に関われるやり方が好きだけれど、その手のレコーディングは大体そういう手法が慣例だ。

良い悪いではないけれど、それらは”アート(芸術品)”ではなく”クラフト(工芸品)”なんだ。

というのも、曲にあいそうな新しい斬新なアイデアを持ち込んだり出来ないからね。プロデューサー達はそれを好まない。飽くまで彼等の求めるスタイルで演奏する必要があるんだ。

そういった現場での仕事も好きだし、沢山の現場で雇ってもらえたことはとても幸せなことだ。

ただ個人的にはもっとアーティストが創造力を発揮し、密接にその音楽にたずさわれるレコーディングの仕方が好きだよ。



Masa:最後に、あなたにとって”JAZZ”とは何ですか?


Tony:その質問には上手く答えられない。

そもそも”音楽”それ自体が私にとってはとても自然なもので、考えるまでもなく常に周りにあるものだった。それを振り返って言語化しようとしても私には良い言葉が見つからない。。。

私は人生の殆どを音楽を演奏することに費やしてきているが、一度も「プロの音楽家になろう!」等の決断をしたことがないんだ。

小さい頃に「ベースで音楽を演奏したい!」と思って演奏をし始めてから、そのまま現在に至る。子供の頃から何も変わっていないよ。

あとは「もっと良い演奏家になりたい!」と願うくらいかな(笑)


「ベースを演奏したい」、「より良い演奏をしたい」、、、その2点だけさ。

とてもシンプルだよ!


最初の質問に関して言えるのは、私はジャズを”演奏することが大好き”だという事かな。

特に兄のピートと一緒に演奏するのはね!


Masa:今日はお時間を作っていただいてありがとうございました。

またLevin Brothersの来日公演を一緒に出来る日を楽しみにしています!


Tony:こちらこそありがとう!

(↑2018年1月、Levin Brothers初ジャパン・ツアーの終了後楽屋での写真。Tony Levinのカメラで撮影し、その後彼のブログに掲載されたもの。

左からErik Lawrence(sax,fl)、Jeff Siegel(ds)、自分、Tony Levin(b,vc) 、Pete Levin(key) )


≪後編・完≫

※Tony LevinのソロCD、Levin BrothersCD、サイン入り詩集、Stick Menの限定BOXセット等は、

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【COMING UP EVENTS!!】


2020.2.28.fri.

STICK MEN feat.Gary Husband

名古屋ブルーノート公演


キング・クリムゾンのリズム隊Tony LevinとPat Mastelotto、そしてスティック奏者第一人者Markus Reuterによるバンド、スティック・メンが名古屋ブルーノート初登場!

1stと2ndで異なる曲目を披露、クリムゾン楽曲も演奏予定! 今回はGary Husbandもスペシャル・ゲストとして参戦!



2020年2月下旬


JONATHAN KREISBERG QUARTET - "CAPTURING SPIRITS" JAPAN TOUR 2020 -

2/24(月) 熊本 CIB 2/25(火) 京都 le club jazz 2/26(水) 名古屋 BLUE NOTE 2/27(木) 静岡 KENTO'S 2/28(金) 東京 PIT INN 2/29(土) 東京 PIT INN


Jonathan Kreisberg - guitar Martin Bejerano - piano Matt Clohesy - bass Colin Stranahan - drums

カート・ローゼンウィンケルやアダム・ロジャースと並ぶ現在最高峰のジャズ・ギタリスト、Jonathan Kreisberg が自身初となるライブ・アルバム"CAPTURING SPIRITS - JKQ LIVE!"のリリースに併せて来日を果たす! 「その場での各々のリスクの上で辿りついた、メンバー間の高い次元でのコミュニケーションが詰まっている。」とジョナサンが言い放つ本作クインテットのメンバーは、 ピアノにMartin Bejerano(チック・コリア、デイヴ・ホーランド、ラッセル・マローン、ロイ・ヘインズ等)。 ベースにMatt Clohesy(マリア・シュナイダーやエリック・アレキサンダー、シーマス・ブレイク等) そしてドラムにはColin Stranahan(ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、カート・ローゼンウィンケル、ギラッド・ヘクセルマン等)という各々が第一線で活躍する名実共にNYCのモダンジャズシーンのトップクラス。 超強力メンバー4人が集まった本公演は、現在進行形ニューヨーク・ジャズの真髄を余すところなく伝えてくれることだろう。

【各公演お問い合わせ&予約】 2/24(月) 熊本 CIB http://cib-co.jp

2/25(火) 京都 le club jazz http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ktsin/

2/27(木) 静岡 KENTO'S http://sz-kentos.jp

2/28(金) 東京 PIT INN 2/29(土) 東京 PIT INN http://www.pit-inn.com





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